あさき／神曲

―あるものは―
―某乃―

日と月と並び　峨々たる嶺
日月同辉　巍峨山巅
嫁いでいく　身は華燭に焼ける
妾身且嫁　身披花烛红衣

やがて四方の景　触れた頭垂れて
遍览四方风景　轻撩头纱
飲んだ　蚯蚓踊る酒を
饮尽　这蚯蚓蠕动的酒

―あるものは―
―某乃―

腸を舐め転ばす
来回舔吮肝肠
「産声！」
「出生了！」
坊主は相好崩し貪る
小僧禁不住喜悦
火柱もろとも腐って
随火柱一同堕落
「化仏よ！」
「是佛陀化身哟！」
佳人は六道
佳人乃六道

小坊主　「あろうことか！あろうことか！」
小僧说　「怎会有这等事啊！怎会有这等事啊！」

百も千も過ぎし頃
纵经流转百千劫
瑞光の遍し大運河に
瑞光洒遍大运河
背骨忘れて　くるわ魚が
忘却脊骨的　游荡鱼儿
びっちゃら！びっちゃら！
啪哒！啪哒！
暁光吐き　白道まで
口吐曙光　洁白雪道

泳ぐ！
游动！

腫れ上がる我のここり裂きて
我贪欲的心逐渐开裂
抉り出した　坊主の呪い　這う
将其剜出　小僧的诅咒　匍匐在地

馬　「まあ！これいかにも！ただならぬ！あすこに！行きたまえ！」
马说　「嘛！这实在是！非比寻常！往那边！去吧！」

唇すぼみてほざいた馬
马儿蠕动嘴唇
髪掴まれ　木の葉になり舞う
牵起的毛发　如同树叶般飞舞
魚挙り喰い！
鱼儿争食！

咳き上ぐ美女　ただつくづく
美人謦欬　痛楚万分
乳飲みしている白衣（童のように）は呻き
含乳饮奶的白衣（如孩童般）呻吟
煩悩の犬となりて　切っ先を向ける
如丧犬般　直指锋芒

這う娘は　二つの河より覗いている
匍匐的女孩　自两道河流汇聚处窥视
白目の歯黒（子に乳飲みさす）に足掴まれ
抓住白眼的黑齿女（在给孩子哺乳）的脚
引きずり込まれた
将其拽了进来

歯黒　「ごゆるりと」
黑齿女说　「请慢慢喝」

揺ららと鳴る仙花紙の雲は極彩色よ
风鸣糙云显斑斓
在す神の祝
那是神明的祝愿

霊香湿る
灵香弥漫
「わたくし　禍言を」
「我将　谶语」
野辺の送りに
在送葬的队列中
「謳うわ」
「唱诵」

恨み　恨み　恨まれ
憎恨　憎恨　被人憎恨

神国に飛び込みたる逆罰
飞入神域遭到报应
浅浅と舞う
轻浅地舞动

彼　「いかがなものか！」
他说　「此为何物！」

雷で噛み千切る！
用电闪雷鸣碎成千片！

百八の笛を　ぴるる　ぴいるるる～
一百零八声笛音　咻噜噜　咻噜噜噜～
六根　六塵　三世
六根　六尘　三世
響き出でたる　鐘
倾荡于　钟声

わたくしの唇　震る振りて神体
我的嘴唇　装作颤抖般祭拜神像
ふりふり　ふりふり　ふりふり
呼哩呼哩　呼哩呼哩　呼哩呼哩

あ～れ～
啊～嘞～

一度落ちた魚は苦輪
堕落一回的鱼儿便是苦轮
輪廻して止まぬ恨みの目
憎恨的目光在轮回中无法停止
その背の鰭に突き刺し運河上る
以背鳍刺破水面上行运河
禍言を叫び　喰い転めきて
叫嚷着谶语　吞噬翻滚

咳き上ぐ者　ただつくづく　神拝している
謦欬之人　痛楚万分　祭拜神明

彼　「やや！そこに在り！」
他说　「呀呀！就在那里！」

背中を炙る　紅蓮の炎にも気付かずに
就连炙烤脊背　狱火围绕也未察觉

呪いの唄　口ずさみて
诅咒的诗歌　低吟浅唱
女は　びっちゃら　びっちゃら　と泳ぐ
女人　啪哒　啪哒　地游着
白き道　縷々と
洁白雪道　缕缕行行

綴る　地の獄　是より
交织的　地狱　始于此处

天道　彩裂き　照らす
天道　照耀　碎裂的彩虹
光に導かれ辿り着いた地ですら苦輪の海
光辉普照处乃苦轮之海
迷い子は紅蓮に焼かれるも　泳ぐ
迷途之子虽为狱火所焚烧也依旧　沉浮于苦海
偽りの瑞光を信じながら
信奉着那虚伪的瑞光

小坊主　「我は思う！
小坊主　「我有所思！
世に一切の衆生が無くなるまで人は！
直到世间一切众生归于虚无人类依旧！
憎しみの海　泳いでいくのであろう！」
在憎恨的汪洋中　沉浮不断吧！」