あさき/この子の七つのお祝いに

子守唄
摇篮曲
「この子の稚き ててが握る紅差し指は禍福よ」
「这个孩子稚嫩的 手所紧握的无名指是祸还是福哟」

貴方の遺愛のぼんぼり粛然と
用你生前心爱的雪洞灯寂然地
灯点して暗夜に濡つ
点亮光辉濡染黑夜
私と子と交錯する 雨音に心願
我与孩子与 雨声中交错的心愿
「散華と散り敷く涙も枯れた」
「落花铺尽泪也干涸」

あれから幾年 貴方が残したちぃさぃ幸せ
自那之后几年 你所温存的微小幸福
髪締め乍ら 夜な夜なこの子の為にと
便是扎起头发 夜夜为了这个孩子
子守の唄を 口遊び 徘徊る四肢
哼着 摇篮歌曲 徘徊四肢

臥所の灯りに ゆらゆら寂寞
寝所的灯光中映照出 摇曳的寂寞
天井踊って 眼下に破れ
舞动在天井 破灭于眼下
飛び散る手足が頭についたり
飞散的手足依附在头
炯々 いひひ と耳奥舐める
炯炯 阴笑 萦绕耳根

毎朝毎晩 舌掻きむしって 騒擾
每日每夜 搅舌扯动 骚扰

反り返る
辗转反侧

もういいかい もういいかい と笑む
已经可以了吗 已经可以了吗 地嗤笑
稚拙な吐息で灸られても
即使被稚嫩的呼吸所灼
この子のために
也是为了这个孩子

うしろの正面だあれ
猜猜我是谁

白黒キネマの廃工場から流れる煙がこの子を包む
黑白电影的废工厂飘散出的烟雾将这个孩子包围
右手 左手 足 首 心音
右手 左手 足 首 心音
蛇口に隠れた少女が飛び出し小さなこの子の姿に閃光
潜在水龙头中的少女飞跃而出闪光将这个幼子的身影
少しずつ食む
渐渐吞噬

この 笑みも 心の埋み火 一切 誰にもやらぬ!
这 笑容和 心中埋藏的怒火 所有的一切 谁也别想碰!
貴方が残した小さな幸せ守るために 白鶴
为了守护你所遗留的小小幸福 白鹤
「溢れる汚水に片身を浮かせて!恥ずべき奴だ!」
「溢出的污水沾满了半身!这可耻的家伙!」
ゲラゲラ讃える狐の団居に背を向け
背对着团坐一边欢颜笑语的狐狸
唇噛みちぎり ぼんぼり抱えて慟哭
咬牙切齿 抱着雪洞灯恸哭

ああ 静かに流れる音が
啊啊 悠悠流淌的声响
こだまして九十九折なす
回声起伏跌宕
小さな貴方の手を引き 生きていく
牵起你小小的手 生存下去
ひらひら 椿の散華
翩翩飞舞 凋零的山茶花
同じ重さの掌にそっと頬よせ
双手轻轻抚在脸颊
火を灯す
点上火光

言祝ぎとした 白雨 消え入る
祝辞化为 骤雨 消逝不见

白黒キネマの廃工場から流れる煙が眩き昇る
黑白电影的废工厂飘散出的烟雾晃晃爬升
金切り声あげ大路に集まり跋扈に散乱 縺れて不揃い
嘈杂声起的大路上跋扈散乱 错综无序
刻々次第に影絵となりて
将每一刻都化作剪影
化粧いた眼球親子に向ける
化妆的眼球朝向母子
奥歯をならしてしたたる夫婦が
打磨臼齿的夫妇
咫尺で息吹く
呼吸于咫尺之间

懐手して足踏みする翁が
两手揣在怀里踏着步子的老翁
手遊びする媼に耳打ちをしている
对着玩耍的老妪耳语

狐「ほらほら はやく 息 とめなくっちゃあ!
狐「来啊来啊 快一点 停止 呼吸吧!
背中にしがみついて 首刈るぞ」
抓住后背 砍下头颅」

点鬼簿くわえた白髪少女が神木登って爪立ち絶叫
被记上了生死簿的白发少女攀上神木垫脚尖叫
咽び この子を 抱き締めた
抽泣 将这个孩子 紧紧地抱在怀里
狐の堵列は這いずり回って裂帛為い為いこの子を掴んだ
狐狸的行列一边发出撕裂缯帛的声音爬动着一边将这个孩子抓走
嗚咽
呜咽
「嗚呼 この子だけは なくさぬように」
「呜呼 只有这个孩子 不愿失去」

助けて!
救救我!

女「耳 鼻 目 口 髪の毛一本 誰にもやらぬ!」
女人「耳 鼻 目 口 一根头发 谁也别想碰!」
狐「おまえが望んだ幸せ ひとつも ひとつも 叶わぬ」
狐「你所憧憬的幸福 一个也 就连一个都 不会实现」
髪の毛むしって嗚咽
扯着发出呜咽之声
少女はもんどりうって笑う
少女翻着筋斗嗤笑着
老夫婦「隠してしまえよ この子が七つになるまで」
老夫妇「藏起来吧 直到这个孩子七岁为止」

女「ああああ貴方!鯉のぼりが空に昇って行くまで!お願い!」
女「啊啊啊啊你!直到在空中升起鲤鱼旗为止!保佑他!」

「この子に幸せの風が吹きますように」
「为了让幸福的风拂过这个孩子」

ああ 貴方の足跡灯し歩く小さな背中をみて祈った
啊啊 看着照亮你足迹前行的小小背影祈祷
この子の七つのお祝いに 小さな折り鶴ひとつ 水上から流す
为了祝愿这个孩子活到七岁 折一只小小的纸鹤 送水面漂游
幸せ込めて 貴方は風に舞う
包含着幸福 你随风飘舞

明らみ差し込む光の尾が笑み
天明的曙光带来了微笑
貴方の遺愛の灯りを消し去り
你生前心爱的雪洞灯渐渐熄灭
大路を掠めて悠然と舞い
掠过大路悠然飘舞
神の木連なる閑居に消えた
消失在神木连绵的闲静处
狐の堵列は歪にくねって右顧左眄 互いに食い合う
狐狸歪斜着行列左顾右盼 相互打量
時折八ノ字に笑みながら
时不时地露出八字的笑容

おやすみよ すやすやと かわいいこ
快安睡 乖乖安睡 可爱的孩子
あなたは 目を閉じて
你只要 闭上双眸
ただすやすやと おねむりなさい
甜甜地 安稳睡去

崩れた積み木の下で抱く狐色の子
崩落的积木下怀抱着狐色的孩子
逃げていく
逃亡而去

神木から落つ 少女の顔ただれて泡吹き 金切り笑う
从神木上坠落 少女的脸庞糜烂起泡 尖声嗤笑
浅黄に染まった男と女は利休鼠の眼球こすって痙攣
染上浅黄的男女挤弄着绿灰色的眼球痉挛着
劈く音して一瞥 先には
一瞥那刺耳鸣声 面前是
双眸を縫ったお狐様の行列が 股開く
闭上双眸的狐狸的行列 排开两侧

もういいかい
已经可以了吗
まあだだよ
还不可以哟
もういいかい
已经可以了吗
もういいよ
已经可以了

首転がる
转过了头

「ああ この子が大きくなれば あなたと過ごした日々がまた」
「啊啊 这个孩子若是长大 似乎又能过上和你在一起的岁月」
瞳は刻んだ硝子の回想
刻画在眼瞳中玻璃般的回想
空を泳ぐ鯉のぼりだけは知っていた
只有在空中飘荡的鲤鱼旗知晓

あ・あ・あ・あ・あ・あ・あ・あ・あ・あ・あ・あ・
啊・啊・啊・啊・啊・啊・啊・啊・啊・啊・啊・啊・
あ・あ・あ・あ・あ・あ・あ・あ・あ・あ・あー
啊・啊・啊・啊・啊・啊・啊・啊・啊・啊・啊—

あ!
啊!

この子 よく 見たら あーあーあーあー
这个孩子 仔细 看看的话 啊—啊—啊—啊—

お人形
是个人偶