あさき/まほろば教
探して
搜寻
捜して
找寻
やっとの思いで 見つけたとしても
终于察觉 即使寻找到了
仮に 万一 仮に
假定 万一 假定
百歩 千歩譲ったとして
百步 就算让出了千步地
仮に
假设
もし仮に
假如说
幸運にも見つけることが出来たとしても
就算是能够幸运地寻找到
実は
其实
世界は何も 変わらない
世界也不会 有任何改变
世界は何も 変わっていない
世界也不会 有丝毫改变
私も僕もお前さんも君も貴方も貴女も貴男も
我也你也尔也汝也若也她也他也
貴様も
你们也
何も 変わらない
不会有 任何改变
まるで 変わらない
完全地 不会改变
「誇らしげである」
「洋洋自得地存在着」
はっはっは
哈哈哈
―早朝 遠く離れた場所にて―
―清晨 于遥远的地方―
まほらがあるらしい
或许存在着桃源仙境
凝視! 巍々と鎮座!
凝视! 威严正坐!
海女たち
海女们
「誇らしげであるー!」
「洋洋自得地存在着!」
海霧の底で へばりつくのだが 何も無い
虽紧贴 于海霧之底 却空无一物
―では 夜まで待とう!―
―那么 等待夜幕降临!―
風のひと
风之人
「ひゅるひゅる ひゅるひゅる」
「咻噜咻噜 咻噜咻噜」
おだやかな夜だ
平稳的夜晚
ううーん!
嗯嗯!
ことごとく出てはいるのだが…
即使一切都会到来…
ううーん…
嗯嗯…
凝視! 注視! 熟視! 看視!
凝视! 注释! 熟视! 监视!
小声の海女たち(怯えた様子である)
细声的海女们(露出怯懦的样子)
「おいそれとは見えぬぞ」
「喂不要看这里哦」
もの並べて遠くに見ゆる
尽览远处风景
「ずんどこ ずんどこ どんどこ どんどこ」
「噌咚 噌咚 咚咚 咚咚」
遠くで何より臆病な心音が聞こえる
听到远方不知从何处传来懦弱的心跳
~一方その頃~
~一方此时~
おだやかな夜だ!
安逸的夜晚!
波のひと
波涛之人
「どどーん! ずんどこずんどこ! ずんどこどこどん!」
「咚咚! 噌咚噌咚! 噌咚咚咚!」
嵐のひと
岚之人
「びゅるる びゅるる!」
「啾噜噜 啾噜噜!」
海女たち
海女们
「磯が伸びるー!」
「低潮!」
男
男
「星の法典を作ってみたがどうか!?」
「试着创作星之法典如何!?」
海女たち
海女们
「干珠で伸びるー!!」
「干潮!!」
海神様(の様であるが)
海神(的模样)
「誇らしげであーるー!!」
「洋洋自得地存在着!!」
海神様(いや 鬼の類であった!)
海神(不 亦是鬼类!)
「引きずりこむー!」
「将他拉拢入伙!」
豁然とある宝全にて
于豁然开朗的仙境之处
深海を産み 昂然と反るのさ
诞于深海 昂然归返
鬼言集より抜粋
精粹自鬼言集
海女たちは歌う
海女们歌唱着
「ひゅるひゅるひゅるひゅる」
「咻噜咻噜咻噜咻噜」
風のひとも歌う
风之人也歌唱着
「びゅーびゅー! びゅるる!」
「啾啾! 啾噜噜!」
悲愁の流人 波濤に爪立つ!
悲愁的流人 在波涛中蹑足!
焼け焦げた雲が互いの顔色を伺い
烧焦的云朵交换彼此的色彩
彼を見下ろしている!
正俯瞰着他!
風のひとも体をまっかにして歌う!
风之人也染红了身躯歌唱着!
「びゅー! びゅーう! びゅーう!」
「啾! 啾! 啾!」
彼
他
「よいだろうよいだろう!
「甚好甚好!
では 灼熱の虹でいけるか!?」
那么 能否前往灼热的彩虹!?」
海坂歪み 燃える
海界混沌 毒燎虐焰
手 伸びる 手
手 伸出 手
鬼 食らう 鬼
鬼 贪食 鬼
天心に! 一閃が! 海界に!
于天心! 一闪! 于海界!
星が燃えている
星星燃烧着
海女たちは逆様になり 嗚咽している
海女们颠倒着 呜咽着
海面より足を突き出し 懸命に月を蹴りあげている
自海面伸出脚 拼命将月亮踢上天空
同様に 彼の足も海面より突き出ている
同样的 他的脚也从海面伸出
時折 ものすごい早さで開脚をしているが
时而 以非常快的速度张开双腿
そのうち ぴくりとも動かなくなった
随后 身体哆嗦着无法动弹
海は穏やかだ
风平浪静
―後の夜へ戻る―
―回归后夜―
破船よりまろび落ちる
自破船摔落而下
海女たち
海女们
「よよと!」
「抽泣抽泣!」
新月の
新月的
海女たち
海女们
「思い詰めている」
「百思不解」
長夜に迷ひてふらり
在漫漫长夜中迷茫
星頭の女性
起头的女人
「ああーん! ああーん!」
「啊啊ー嗯! 啊啊ー嗯!」
余波にはらわた数多見て
余波中露出大量肠脏
~或いはまたその一方で~
~或许仍在那一方~
頭垂れし男性は影在り
此乃垂着脑袋男人的影子
双子の解説者
双胞胎的解说者
「どうやら潮境にて 篝火をたいている様子」
「海洋锋面中似乎 燃烧着篝火的样子」
うーん…
嗯…
自身の顔を暖めている ようにも見えるのだが
虽然能看到 温暖着自己的脸庞的模样
ここからではよく見ることが出来ない
从这里却无法看得一清二楚
「波掛け衣かにもかくにも 燃やして」
「无论怎样打湿衣襟 都燃烧起来吧」
星の法典「もののあわれを知る心」より抜粋
精粹自星之法典「知晓悲怆的心」
うーん…
嗯…
何かを呟いているようなのだが
虽然是窃窃私语地说着什么的样子
ここからでは聞き取ることが出来ない!
从这里却无法听得一清二楚!
残念だ
遗憾
―前の夜へ戻る―
―回归前夜―
海が荒れ始めている
海洋风暴开始之时
海女のひと曰く
海女之人说
またあんだら男がここを訪ねてきたらしい
那个愚钝之男似乎还会造访此地
風のひと
风之人
「ひゅるるるる~」
「咻噜噜噜噜~」
嵐のひと
岚之人
「びゅるるるる!」
「哔噜噜噜噜!」
風のひと(嵐のひとの真似をして)
风之人(模仿着岚之人的模样)
「びゅるるるる!」
「哔噜噜噜噜!」
波のひと
波涛之人
「ずんどこどこ!」
「噌咚咚咚咚!」
海女のひと
海女之人
「おはしまさふ!」
「欢迎光临此地!」
わたなかに火の道現るるより早く
海上快速地显现出火焰的道路
鬼のひと
鬼之人
「神づまり!」
「端坐!」
激怒している!
激怒着!
海神(偽物だが)は激怒している!
海神(虽是伪物)激怒着!
全身が蒼い色の炎で包まれている!
全身被苍色火焰包围!
男
男人
「海の法典を作ってみたがどうだ!」
「试作海之法典如何!」
海女たち
海女们
「おとろしや壊劫なりおとろしや!」
「好恐怖呀末日降临好恐怖呀!」
腸が凍る! 腸が燃える!
肠脏冻结! 肠脏燃烧!
―星の法典より―
―自星之法典―
ああ えがみ月 せりあげし怒濤 渺茫と
呜呼 扭曲的月亮 喧嚣的怒涛 浩瀚渺茫
底なしの欲得以てひかめき
且以无底的欲求而闪耀
―大宇宙の法典より―
―自大宇宙的法典―
宝前の忘れ 風むかひ 波むかへ あんだらよ
佛前的遗忘 迎接狂风呼啸 朝向波涛骇浪的 愚者哟
腹這いになり 魚の真似事をする海女たち
匍匐着 模仿着鱼的海女们
「かしこみ かしこみ…」
「好可怕 好可怕…」
世を背き 夜 空に巣がく
背负尘世 夜晚 筑巢于空中
怒 怒 怒 怒
怒 怒 怒 怒
怒!
怒!
恥辱のあまり正体を現した鬼たちが
羞辱至极原形毕露的鬼们
彼を海の底へと引きずりこもうとした瞬間!
妄图将他引向海底的瞬间!
仏様(のようなひと)が暗澹たる中天より
佛(一样的人)自黯淡空中
すす すすす―
嘶嘶 嘶嘶嘶―
と舞い降り 凍りついた眼をこちらにむけ
地飞舞飘下 朝着冻结的双眼
千本ほどもある
有上千片之多
ご立派な御手を差し出しているではないかー!
能否高抬贵手!
仰向けになり 大宇宙で踊る星々の真似事をする海女たち
仰头朝天 在大宇宙中舞蹈着模仿繁星模样的海女们
「かしこみ かしこみ…」
「好可怕 好可怕…」
海神様(どうやら「其のひと」と思われる)は
海神(不如说是「那个人」为好)
白目を剥いて口を大きくあけている
扒下白眼珠张大了嘴
無様な鬼たちも同様に
不成人形的鬼们也同样
白目を剥いて口を大きくあけている
扒下白眼珠张大了嘴
臆病な海女たちも同様に
胆怯的海女们亦是同样
白目を剥いて口を大きくあけている
扒下白眼珠张大了嘴
暗転
暗转
―干し魚のお面を被った男の切なるお伺い―
―披着干鱼容貌的男人恳切的问候―
これより先に映し出された映像は早回ししてあり
此后所映照出的映像犹如走马观花
また ふいに巻き戻され また中断されている
又一次 突然被卷入 又被中断
その上 何かはわからないが 映像全体を通して
且 不知为何 从映像整体来看
赤い妙な滲みが非常に多く
渗透着繁多的赤色玄妙
まともに閲覧することは
从正面阅览的话
困難なものとなっているのだ!
是非常困难的事!
そこで ぜひ貴方が直接現地に赴き 体験し
那么 请你务必直接赴往现场 体验
そこで何が起こるのか
在那里发生了什么
いやその時 何が起こっていたのか
应该说在那个时候 发生了什么
あの男に何が起こったのか
那个男人发生了什么
是非私に伝えてほしい!
请务必传达给我!
うーん! ううーん!!
嗯! 嗯嗯!!
―到達をして―
―到达―
気がつくと 男は蒼色の砂漠にいた
察觉之时 男人已在苍蓝的沙漠之中
小さな砂の山が
小小的砂之山
ぽつりぽつりと 点在しているのだが
沙拉沙拉 散布在各处
そのうちのひとつの蒼い山の中腹にて
然后在其中一座 苍山的山腹中
斜に端座している
倾斜地端坐着
まさか まさか まさか ここが!
莫非 难道 怎会 在此!
男
男人
「やったぞ やったのだ!
「做到了 做到了!
とうとう私は辿り着いたのだー!」
我终于到达了!」
おめでとう!
恭贺!
おめでとう名も無き青年よ!
恭贺没有名字的青年哟!
貴殿はとうとう到達したのだ!
汝终于到达了!
男は興奮のあまり
男人兴奋至极
白目を剥いて口を大きくひらき
翻起白眼张开大嘴
一心不乱に蒼い大地を摩擦している
聚精会神地摩擦着苍蓝的大地
蒼いひと
青色的人
「すやすや すやすや」
「香甜入睡 香甜入睡」
赤いひと
赤色的人
「すやすや すやすや こくり こくり」
「香甜入睡 香甜入睡 打着小盹儿 打着小盹儿」
投げ首の蒼い珊瑚礁たちが難渋している
丧气的苍蓝珊瑚礁们陷入了苦恼
投げ首の赤い珊瑚礁たちが呻吟している
丧气的赤红珊瑚礁们发出了呻吟
白いひと
白色的人
「しんしん しんしん」
「岑岑 岑岑」
紅雪を廻らす影のの遠く
被红雪包围的影子渐行渐远
男が時も忘れて魚の真似事をしていると
男人连时间也都忘却地模仿着鱼的样子
真赭色の着物を着た女性(のようなひと)が
穿着红褐色衣服的女人(模样的人)在
近づいてくる
逐渐地逼近
舌の長い女性(のようなひと)
长舌头的女人(模样的人)
「■■■■■■■■■■■■」
「■■■■■■■■■■■■」
うまく聞き取れない
无法听清楚
男が端座しながら首をかしげていると
男人歪着脑袋端坐着
女性(のようなひと)は
女人(模样的人)
自身の顔の皮膚をべろり!と剥ぎ取り
用舌头舔舐自己头上的皮肤!将其剥取下来
鉄と鉄が擦れ合うような 奇怪千万な声でこう詠った
仿佛铁与铁之间摩擦般 发出千奇百怪的声响
顔の爛れたひと
脸庞糜烂之人
「■■■■■■■■■■■■」
「■■■■■■■■■■■」
途端 女の顔が 凍りつき 爆ぜ
欲言 女性的脸庞 冻结起来 爆炸
億万の氷柱となって 男の眼球に突き刺さる
化作一万的冰柱 刺入男性的眼球
生死長夜だ!
乃生死长夜!
大宇宙の中心へところげ落ちる男
坠入大宇宙中心的男人
「あ~あ~ あ~ ああ ああ~ ああ~んああ~ん」
「啊~啊~ 啊~ 啊啊 啊啊~ 啊啊~嗯啊啊~嗯」
男の顔は凍りつき 手からは炎が 足からは炎が
男子的脸冻结着 于手始乃炎 于足始乃炎
全身から炎が 業火が 焔が!
于全身始乃炎 乃业火 乃焰!
ひ ひ ひ が ~~~~~~
是 火 火 火 ~~~~~~
そして口からは大量の火虫が吹き出している!
随后从口中吐出大量的火虫!
役者たちは変わらず 白目を剥いて
演者们没有更替 扒下白眼珠
口を大きくあけている
使他的嘴张开张大
其の口からは大量の火虫が吹き出ている
从他口中吐出大量的火虫
火虫は凍りつきながら 天へ昇り
火虫一边冻结 一边升向天空
大宇宙に燦然と輝く星々に繭を作り
在大宇宙中灿然闪耀的繁星之际作茧自缚
億万の其れは大銀河を形成し
亿万的它们汇聚成大银河
遍く生物待望の大海原として擬態し
拟态为所有生物所待望的大海原
またこの世界へと還ってくるのだ
再一次回到这个世界
ざんねんなことだ
遗憾无比
もう還れない
再也无法归还
かなしいことだ
悲哀至极
もう戻れない
再也无法归来
四劫の輪廻へようこそ青年よ!
欢迎来到四劫轮回青年哟!
はっはっは まほらなどなかった!
哈哈哈 桃源仙境无存于世!
なんとも 愉快痛快な結末ではないか 青年よ
实在是 愉快痛快的结局不是吗 青年哟
はっはっは 青年よ はっはっは
哈哈哈 青年哟 哈哈哈
そうだそうだ そこの君たちも笑ってごらん
对了对了 那边的你们也一同欢笑吧
私
我
「はっはっは!」
「哈哈哈!」
そこの君たち
那边的你们
「わっはっは!」
「哇哈哈!」
私たち
我们
「あっはっは!」
「啊哈哈!」
―篝火を焚き 祭祀するひと曰く―
―焚烧篝火 祭祀的人说―
「ああ まほらなどなかったのだ」
「啊啊 桃源仙境根本不存在」
―砂漠へ戻る―
―回归沙漠―
そうだ まほらなど なかったのだ
是啊 桃源仙境 无存于世
全てに等しく 無は語りかけ 有と誘い
众生平等 言归于无 诱使为有
また無に還る
再归于无
それだけのことだ
仅仅如此
ざんねんなことだ
真乃憾事
浮夜の海往く
去往浮夜的汪洋
月掛かりの 過ぐ世とも 思ひ
一同追忆 月挂当空的 往世尘埃
涙の底惑いながら 躓き蹲りながら
泪尽干涸时虽困惑无比 却依然艰难竭蹶地
欠け細る残月の波を舐めずり 漣に消ゆ
舔舐残月的波浪 消逝于涟漪
大宇宙の法典「ひと」より抜粋
精粹自大宇宙的法典 「人」
「ひゅるひゅるひゅるひゅる」
「咻噜咻噜咻噜咻噜」
是 触れるべからず
此处 本不应触及
―あとがき―
―后记―
二つ頭の魚のお面を被った男
披着双头鱼容貌的男人
「先ほどはうんぬんかんぬんとお伺いをたてたが
「先前之言是有所泛泛而谈
勘のするどい私は
敏锐刻薄的我
そのお伺い 遠慮をすることにするよ!
对此言 有失顾虑哟!
失敬! ははは!」
失敬! 哈哈哈!」
そうだ
是啊
真実に触れてしまった貴方もまた
触及到真实的你也会
あの男のように
同那名男人一样
もはや救われることはないだろう
再也无法得到救赎吧
永遠に
永远
永遠に
永远
永遠に
永远
永遠に
永远
永遠に
永远
永遠に
永远
永遠に
永远
永遠に
永远
永遠に救われない
永远得不到救赎
ざんねんなことだ
真是遗憾
つづく
待续